【この世界の片隅に】人さらいの化け物やワニの正体は?何を象徴しているのかについても

アニメ

2016年に公開された映画「この世界の片隅に」

第2次世界大戦中の広島・呉を舞台に、激化していく世の中で大切なものを失いながらも日々の暮らしを紡いでいく女性すずの姿を丹念に描いた作品です。

作中冒頭と終盤で、人さらいの化け物、そして他にもワニや座敷わらしも登場します。

リアリティにこだわった映画の中でも浮いていたキャラクターでしたが、どういう意味があったのでしょうか。

そこで今回は「この世界の片隅に」人さらいの化け物やワニの正体や座敷わらしについて解説します!


【この世界の片隅に】人さらいの化け物やワニの正体は?

人さらいの正体は”鬼イチャン冒険記”に描かれている?

原作や映画の一部に兄・要一をモデルにした『鬼イチャン冒険記』というすずが描いた漫画が登場します。

これは戦死したと報告された兄・要一についてのかなりおかしな話で、その構成は次の3つに分かれています。

【第一部】
すずの兄(要一)である「鬼いちゃん」が、船に乗っていたら、船よりもデカい巨大イカに襲われて船が沈没。「鬼いちゃん」はそのイカを口から出る炎で焼いて、そのイカを仲間と一緒に食べる、という話。

すずの強烈な思い出補正がかかって「鬼いちゃん」がバケモノみたいに強い、という設定になっています。

【第二部】
ここではワニが登場します。アジアのどっか(ニューギニア?)の湿地帯で行軍していると、「鬼いちゃん」はワニ(のちの嫁)に襲われて頭をかまれました。

しかし「鬼いちゃん」はそのワニの尻尾をもってブンブン振り回して、空を飛んでいた戦闘機に投げつけました。

その戦闘機はワニの激突によって墜落するんですが、「鬼いちゃん」の頭に墜落します。

【第三部】

「鬼いちゃん冒険記」の最後のエピソードでは、「鬼いちゃん」はそのワニ(のちの嫁)と一緒に、墜落させた戦闘機をバクバク食べます。

さらに「鬼いちゃん」は、食べ残した戦闘機のフレームを使ってワニ(嫁)と一緒に家を建てます。それから「鬼いちゃん」と嫁(ワニ)はラブラブな生活を送ることに。

最終的に「鬼いちゃん」は、あの「化け物」とまったく同じ姿になり、周作とすずを入れていた、あのカゴを背負って外出する・・

この「鬼イチャン冒険記」で描かれた要一はボーボーのひげと髪の毛という点、また動きの乱暴さなどバケモノと似通っていました。

このことから化け物の正体はすずの兄である要一であることは明らかです。

ワニの正体はお兄ちゃんの嫁?

先ほどの「鬼イチャン冒険記」の三部でワニと鬼いちゃんは仲睦まじく暮らしていました。

鬼いちゃんはすずの兄なので、その兄と暮らしていたのは要一のお嫁さんだと考えられます。

映画では、原爆投下によって変わり果てた広島で、すずと周作が初めて会った橋に立って話しているとき、2人の背後をあの人さらいのバケモノが通り過ぎていきました。

それに気付いたすずと周作は人さらいのバケモノを目で追っていると、人さらいのバケモノが背負っているカゴの中から、可愛いリボンを付けたワニが出てきて、すずと周作に手を振っていました。

なぜ2人が登場したのかについてはわかっていませんが、兄は死んでいることから考えると、2人が幸せになったことを見届け、最後に挨拶にきたのかもしれません。

だからこそワニはすずと周作に対し「さよなら」を意味するように手を振っていたのではないでしょうか。

【この世界の片隅に】人さらいの化け物やワニは何の象徴?

化け物は居場所を探す道先案内人の象徴?

「この世界の片隅に」の重要なキーワードとなっているもの、それは「居場所」です。

作中には「居場所」をテーマに描いたシーンがよく出てきます。

  • すずの「居場所」である家が燃えないように焼夷弾の火を消すシーン
  • 爆撃で家を失ったことで茫然とした市民の背中だけを映したカット
  • 家を失った戦災孤児をすずと周作が引き取るラストシーン

このように激しい戦時下の人々にとって自分の居場所は極めて大切なもので、それがなくなれば人は哀しい放浪者になってしまいます。

すずの描いたバケモノはそんな戦時下の放浪者をどこかの理想郷に導くガイドとして描かれているのです。

実際作中の冒頭で、バケモノは望遠鏡を持っていて、すずにいろんな景色をながめさせました。

すずはバケモノを頼って周作と一緒に戦争のない居場所を探したかったのではないか。

バケモノの空想からはそんな切なる思いが伝わってきます。

化け物は原爆の怖さを示す象徴?

化け物は「居場所」の象徴だけではなく、すずの悪夢の運命の象徴と読み取ることもできます。

すずはバケモノを自分と周作を誘拐した「人さらい」と見ていて、それは膨大な人の命をさらっていった「原爆」とも重なります。

また、すずは細工した望遠鏡でバケモノに夜を見せることでその魔の手から逃れていましたが、そこからは原爆に象徴される闇の運命を自らの手で変えようとする彼女の強さも感じられます。

さらに、バケモノが再び登場したのはすずと周作が原爆投下後の荒れ地で再会したとき、バケモノはただ素通りして手を振るだけでした。

それは愛し合う2人が原爆という悲惨な運命を克服したことを意味しているのではないでしょうか。

まとめ

いかがだったでしょうか。今回は「この世界の片隅に」人さらいの化け物やワニの正体や座敷わらしについて解説しました!

個人的にすずの兄の要一が姿を変えた鬼いちゃんは、言動とは裏腹に本当に優しい人間だったのではないでしょうか?

周作とすずを結びつけていたのも鬼いちゃんでしたし、すずが幸せに生きれるように見守っていてくれた存在だったんですね。

 

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